診療案内

  • 名古屋大学心臓外科学教室(碓氷章彦教授)の協力を得て平成15年4月から心臓血管外科を開設して診療をおこなっています。
  • 当院のモットーは患者さん一人一人に納得のいく治療を提供すること、24時間体制で心臓血管外科手術に対応することです。そして何より大切にしているのは我々に治療を任せていただける患者さんとそのご家族に対して優しさと感謝の気持ちを持つことです。
  • 当院の心臓血管外科が対象とする疾患は、基本的には成人疾患になります。主なものは狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(冠動脈バイパス手術など)、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、大動脈解離症(人工血管置換術など)、弁膜症、感染性心内膜炎(弁置換・弁形成術など)、不整脈(メイズ手術)、閉塞性動脈硬化症(各種バイパス手術)などです。先天性心疾患は成人期のものと新生児の動脈管開存症などを治療しています。
  • 当院では地域の先生がたとしっかりとした病診連携システムを構築しています。もちろん緊急性を要する疾患については直接ご連絡いただければ対応させていただきます。周辺地域の救急隊と勉強会を共有しながら密接な連携をとっており、平成22年6月からドクターカーの運用を開始しています。救急部(平成18年4月発足)及びICUが救急疾患に対して積極的に介入しており心臓外科緊急手術への対応は極めて迅速です。また急性冠動脈疾患に迅速に対応するために平成20年9月にCCUを開設し、平成28年からは独立したユニットとして稼働しています。それにより胸痛や心不全患者さんの常時受け入れが可能となっております。

心臓血管外科 山崎武則
心臓血管外科 山崎武則

手術室
手術室

CCU
CCU

ICU
ICU

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対象疾患・治療について

虚血性心疾患

当院は急性心筋梗塞搬送病院の指定を受け、24時間体制で虚血性心疾患の治療にあたっております。最近のカテーテル治療の進歩はめざましく多くの症例が内科的に治療可能となりましたが、病変や合併症の存在などにより外科的治療に頼らざるを得ない症例があります。従って近年、心臓外科が扱う冠動脈病変はますます多枝化、複雑化しており、加えて重篤な合併症を伴う症例が増加しています。
90年代半ばより「低侵襲心臓手術」として人工心肺を使用しない冠動脈バイパス手術(オフポンプCABG)が登場しました。高齢者や脳血管障害ハイリスク症例その他の体外循環禁忌症例など、従来では手術の適応にならなかった患者さんにも、オフポンプCABGにより血行再建が可能となりました。
我々のモットーは、患者さんにベストかつシンプルで安全性の高い血行再建術を提供することです。人工心肺そのものに侵襲性が存在することは否定しませんが、オフポンプCABGにも術中の急激な血行動態の変化に対応しにくいことや遠隔期成績がオンポンプのそれより若干劣るなどの欠点が存在し、再考の時期に入っています。現在の選択は体外循環が安全に使用できる症例ではオンポンプCABGを、体外循環ハイリスク症例ではオフポンプCABGを原則にして血行再建を行っています。手前味噌で大変恐縮ですがオフポンプ、オンポンプ手術の双方に習熟しており、しっかりした技術的な裏付けと根拠をもとに手術の安全性を確保しています。

オンポンプCABG

オフポンプCABG

特に周術期の脳梗塞合併症対策として術中大動脈エコー検査を重視しています。非常に簡便で大動脈の内膜肥厚の様子を把握することができます。全例に実施して人工心肺使用の可否や手術のデザインを決定しています。

術中大動脈エコー
術中大動脈エコー

近年、虚血性心筋症またそれに伴う僧帽弁閉鎖不全症などを合併している重症例も多く、弁形成術や左室形成術付加の必要性は循環器科との詳細なカンファレンスにて検討しています。

左室形成術(ドール手術)
左室形成術(ドール手術)

グラフト選択(内胸動脈、橈骨動脈、大伏在静脈、胃大網動脈などを使用します)とその取り回し(配置や吻合法のデザイン)については多彩なオプションを持っており最適な血行再建術が提供できるように配慮しています。最近では術後の確認造影もMDCTの導入により、患者さんにとってより低侵襲になりました。

術後グラフト造影
術後グラフト造影

CABG術後CT

CABG術後CT

弁膜症

弁膜症に対する手術には弁置換術と弁形成術があります。近年、高齢者の動脈硬化性の大動脈弁狭窄症、及び僧帽弁では逸脱症や虚血性心疾患に伴った僧帽弁閉鎖不全症が増加しております。弁膜症は無症状に経過する期間が比較的長く心筋のダメージが予想以上に進行しています。成績向上のためには心不全に陥る前の治療がすすめられます。
弁置換術は悪い弁を取り除き人工弁に入れ換える手術です。機械弁と生体弁に分類されますが、耐久性に優れる機械弁、抗凝固療法の必要性の無い生体弁などそれぞれに特徴があります。近年では生体弁にも組織固定法や石灰化抑制処理などに工夫が加えられ、耐久性のかなりの向上(おそらく15年以上は大丈夫でしょう)が見込まれています。

  • 機械弁
    機械弁
  • 生体弁
    生体弁

弁形成術は自分の弁を作り直す手術です。大動脈弁への適応にはまだ一般的ではありませんが、僧帽弁逆流(弁尖の逸脱などによるもの)や三尖弁逆流に関してはほぼ手技的に確立しています。最終的に形成術が可能かどうかは心エコー検査で判断します。症例ごとに弁逆流のメカニズムを評価して、形成可能症例には積極的に採用しています。

  • 変性した僧帽弁
    変性した僧帽弁
  • 僧帽弁形成術のシェーマ
    僧帽弁形成術のシェーマ
  • 僧帽弁形成術
    僧帽弁形成術

治療選択の目安としては‥‥年齢を問わず僧帽弁と三尖弁は弁形成術の可能性を最初に考慮します。大動脈弁に関しては人工弁置換術を選択します。人工弁の選択(生体弁vs機械弁)については、生体弁耐久性の向上と抗凝固剤内服の必要性等から70歳前後をボーダーラインと考えています。具体的には65歳未満の方には機械弁を、70歳以上の方には生体弁をお薦めして65歳から70歳までの年齢の方にはご本人に選択していただいています。
弁膜症の手術成績は心機能によるところが大きく、いたずらに手術を引き延ばすべきではないと考えます。外科治療を念頭にいれて循環器専門医による評価と定期的なフォローアップが必要です。
緊急性を要する弁膜症の手術疾患として“感染性心内膜炎”があります。感染性心内膜炎は心臓内の弁などの構造物に細菌が付着して感染を起こす疾患です。稀な疾患ですが、心不全と菌血症(細菌が血液内に侵入して繁殖すること)が進行して何らかの治療を施さなければ救命できない恐ろしい疾患です。弁膜症、先天性心疾患や抜歯などの歯科観血的治療後の患者さんなどに発症しやすく、また透析や糖尿病患者さんなど免疫状態の低下している場合にも罹患しやすいといわれています。すなわち体のどこかから血液中に細菌が侵入して発症する疾患のなかで最悪のものと考えられます。余談ですが、最近になって意外な原因が注目されてきました。それは歯磨きや咀嚼という口腔関連の日常行為による出血です。歯磨きは一日に何度も行なう行為ですが、もし歯周病がひどくて口腔内で出血していると、毎日何回も菌血症になる可能性があるわけです。実はこのような菌血症こそが感染性心内膜炎の原因として重要なのではないかと考えられています。
本症は心不全治療と感染症治療を同時並行で行ないます。しかしいずれの治療もコントロールがつかなければ外科的介入が必要となります。当院の医療圏においては比較的本疾患が多いという印象があります。常日頃から口腔内衛生の留意にも心がける必要があります。

  • 細菌に侵された僧帽弁
    細菌に侵された僧帽弁
  • 細菌に侵された大動脈弁
    細菌に侵された大動脈弁
大動脈瘤

大動脈瘤とは大動脈にできる瘤(こぶ)のことで、できる部位や範囲によって治療方法が大きく異なります。大きさが胸部では5〜6cm、腹部では4〜5cmを越えるものが一般的に手術の適応となります。
胸部大動脈瘤は手術において脳脊髄や心臓など重要臓器を保護するための補助循環が必要となり侵襲も大きくなるため、患者さんの年齢や合併症等により治療方針を慎重に選択する必要があります。また近年、手術中に術野から使用できるステントグラフトが市販されるようになり、手術が以前より低侵襲下に行なえるようになりました。

  • 上行弓部大動脈瘤
    胸部(上行弓部)大動脈瘤
  • 上行弓部人工血管置換
    胸部(上行弓部)人工血管置換
  • 下行大動脈瘤
    ステントグラフト用いた上行弓部人工血管置換
  • 下行大動脈人工血管置換
    胸部(下行)大動脈瘤
  • 上行弓部大動脈瘤
    下行大動脈人工血管置換

腹部大動脈瘤は日常の臨床でしばしば遭遇する疾患です。そのほとんどが動脈硬化性で、罹患率についてはっきりとした報告はありませんが、潜在する症例はかなり多いと考えます。腹部に拍動するしこりを認めれば、必ずエコー等で確認することが必要です。この疾患は多くの場合が「無症状」ですが、実はそれが曲者です。本症は①他疾患の精査で画像上偶然診断される ②検診 ③患者さん自身が腹部の拍動に気づいて受診 ④破裂時 などにより診断されていますが、頻度的にはこの順に多いのが実態です。救急医療の現場では突然の破裂による大量出血で病院に到着しても既にショック状態で、慌てふためいてオペ室へ直行することも多く、急性大動脈解離などの疾患よりも時間的余裕がありません。破裂した場合は約半数しか病院に搬送できず緊急手術に持ち込めても死亡率は30~90%にも上るという報告もあります。待機的に手術を施行した場合の当院の死亡率が0.3%程度であることを考えると大きな差異です。破裂する前にピックアップされた患者さんはある意味、ラッキーと考えられます。破裂前に手術を施行すれば、成績も非常に安定しております。ほとんどの症例で外科的な人工血管置換術が可能です。腹部大動脈瘤はその足側で左右に分岐してからの動脈(腸骨動脈と呼びます)にも瘤化や狭窄(内腔が細くなっていること)が認められることが多く、可能な限り臓器への血管の再建を心がけています。そのため開腹手術のリスクに問題が無ければ外科的手術を原則としています。

  • 上行弓部大動脈瘤
    腹部大動脈瘤
  • 上行弓部人工血管置換
    腹部大動脈瘤切迫破裂
  • 下行大動脈瘤
    腹部大動脈瘤手術
  • 下行大動脈人工血管置換
    4分枝人工血管による置換術
  • 上行弓部大動脈瘤
    4分枝人工血管による置換術

また外科的な人工血管置換術に対して、当院では平成24年よりステントグラフトによる治療を実施しています。ステントグラフトは瘤の形態で適応が制限されること、分枝血流が犠牲になること、エンドリークの懸念などで術後に造影CTによる定期的なフォローアップが必須であることなど問題点もありますが、手術侵襲は小さく術後一週間ほどで退院することが可能です。中期遠隔成績では良好な結果が報告されております。従来の開胸、開腹を伴う外科的治療と比較して低侵襲で高齢者や合併症を有する患者さんにも施行できる可能性があります。動脈瘤の形態やアプローチ血管などを評価して適応があれば積極的に治療を薦めています。


  • 腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術
  • 上行弓部人工血管置換
    腹部大動脈瘤ステントグラフト

胸部大動脈瘤のステントグラフト治療については残念ながら当院では実施しておりません。適応患者さんを選択して名古屋大学などの実施可能施設に紹介しております。
大動脈解離症は高血圧などが原因で大動脈の内膜に亀裂が生じ動脈壁が裂けてしまう病気です。突然、胸部や背部の激しい引き裂かれるような痛みで発症します。この疾患は近年、増加の傾向にあり生命を脅かす大病で緊急性を要します。高血圧があり突然発症した胸痛や背部痛はこの疾患を疑います。すぐに救急車を要請して来院して下さい。

  • 急性大動脈解離
    急性大動脈解離
  • 上行弓部大動脈人工血管置換術
    上行弓部大動脈人工血管置換術
大動脈解離を発症された患者さん、そのご家族さまへ

突然発症され生命が危険にさらされる非常に重篤な疾患であり、特にA型という緊急手術を必要とするタイプでは時間的な猶予の無いことが多く、状態によっては手術室へ直行する必要があります。術前に十分な説明ができないことが多く、大変不安に思われることでしょう。本疾患は大動脈壁が裂けてしまう急性疾患であるため、体内への大出血や脳脊髄、心臓、腹部臓器、下肢などの重要臓器への血流障害が生じると救命困難です。緊急手術となる疾患の中では非常に厳しい領域に属しますが、当科ではチーム一丸となって全力で治療にあたっております。

閉塞性動脈硬化症(ASO)

動脈硬化が進行して下肢に十分な血液が供給できなくなる病気で、「足の狭心症」とも言われています。下肢の症状として見られがちな間歇性破行(ある一定の距離を歩行すると下肢に痛みが生じてくること)は生命予後が不良で全身の血管病を知らせるシグナルです。ASOの半数以上に冠動脈疾患や脳血管障害の合併が認められます。
血行再建適応症例は循環器科と連携してPTA(バルーンやステントによる血管形成術のこと)あるいは外科的バイパス手術を施行いたします。虚血の程度、血管の硬化度と形態などの評価が必要ですので、まず循環器科受診が必要です。
また四肢の急性動脈閉塞症は、四肢の動脈が突然血栓などで閉塞を起こし血液が行かなくなる疾患です。心筋梗塞症と同様で発症後迅速な処置が必要となります。救急対応が必要ですので急いで受診して下さい。

  • 下肢血管造影
    下肢血管造影
  • Y型人工血管によるバイパス
    Y型人工血管によるバイパス
  • 後腹膜経路によるバイパス
    後腹膜経路によるバイパス
動脈管開存症(PDA)

新生児期の心臓疾患です。胎児期に機能していた動脈管という組織が出生後に閉鎖しないため心臓や肺に負担をかけます。多くの症例が内科的治療に反応しますが、まれに外科的治療が必要となります。当科ではNICU管理のもと手術要請があれば積極的に治療にあたっています。お困りの際は緊急的な対応も可能ですので、小児科医師か当科の方にご相談ください。

  • 新生児に対する動脈管結紮術
    新生児に対する動脈管結紮術
  • 動脈管結紮術
    動脈管結紮術
入院の目安
区分 入院期間
冠動脈バイパス手術 約2~3週間
弁膜症手術 約2~3週間
胸部大動脈瘤手術 約3週間
腹部大動脈瘤手術 約2週間
腹部大動脈瘤手術(ステントグラフト) 約5~8日間
下肢血行再建術 約10日間

診療実績

心臓血管外科 平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度
単独冠動脈バイパス手術 37 36 45 43 38
  CABG+弁膜症手術 9 9 17 17 12
  CABG+大血管手術 1 0 1 0 0
単独弁膜症手術 25 22 25 19 24
弁膜症+大血管手術 1 3 0 2 4
胸部大動脈瘤 12 19 30 24 20
腹部大動脈瘤 22 22 29 27 32
末梢血管再建術 5 8 4 3 6

スタッフ紹介

山﨑 武則

やまざき たけのり

心臓血管外科代表部長

  1. 心臓血管外科
  1. 日本心臓血管外科学会 専門医
    日本胸部外科学会 指導医
    日本外科学会 専門医・指導医
    日本心臓血管外科学会国際会員
    麻酔科標榜医
    臨床研修指導医

西 俊彦

にし としひこ

心臓血管外科医長

  1. 心臓血管外科
  1. 日本外科学会 専門医
    日本心臓血管外科学会 専門医
    胸部ステントグラフト実施医
    腹部ステントグラフト実施医
    浅大腿動脈ステントグラフト実施医
    TAVR実施医

当院へのご質問・ご意見など、お気軽にお問い合わせください。

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