「呼吸」は生きていくための大切な営みの一つです。肺は呼吸を通じて常に空気中のほこりや病原体にさらされており、また、豊富な血液が流れている臓器であるため様々な病気が生じます。
私たち呼吸器内科は気管、気管支、肺、胸膜の病気全般についての診療を行います。
中でも肺がん、ぜん息(気管支喘息)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器感染症が4大疾患であり当科でも力を入れております。
また、下記のような症状やご病状をお持ちの方や精密検査を指示された方に対し専門診療を行っております。
上記以外でも当科の診療の対象となる病気は多岐にわたり、主なものは下記のとおりです。
慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 肺気腫、慢性気管支炎 |
アレルギー ・ 免疫疾患 | 気管支喘息、 せき喘息、 過敏性肺炎、 サルコイドーシス、 好酸球性肺炎、 リウマチ・膠原病に伴う肺疾患 など |
腫 瘍 | 肺がん、 胸膜中皮腫 など |
間質性肺炎 | 肺線維症 など |
胸膜疾患 | 胸膜炎、胸水、 気胸 、 膿胸 など |
感染症 | 各種の肺炎、 肺結核、 非結核性抗酸菌症、 肺化膿症、 肺真菌症 など |
その他 | 気管支拡張症、 びまん性汎細気管支炎、 じん肺、 慢性呼吸不全、薬剤性肺炎 など |
私たちは、患者さんお一人お一人がお持ちの基礎疾患、体力、ご病気への取り組み方に合わせて最適な検査、治療をわかりやすくご説明し、ご理解と納得をいただいた上で診療を進めて参ります。わからないことがありましたら遠慮なくおっしゃって下さい。
初めて受診される方は、お近くの医療機関からの紹介状をご持参下さい。 また、初診でも時間を予約して受診することもできます。予約につきましては紹介元の医療機関へご相談ください。
「ぜん息」(気管支喘息)は、気管支における慢性のアレルギー性炎症により起こります。息苦しさを治し、ぜん息発作を起こさないためには、この炎症を抑える必要があり、最も重要な薬は吸入ステロイドです。症状の重症度により十分な吸入ステロイドを毎日継続して吸入し、必要に応じ種々の抗ぜん息薬を併用することにより、気道炎症を抑え、ぜん息発作を予防します。
当科では、ぜん息のない方と変わらぬ日常社会生活が可能になることを目標に、学会のガイドライン、指針に沿い,お一人お一人のご病状に合った治療や生活指導を行っております。
また、慢性咳嗽、特に「せき喘息」の診断、治療にも力を入れております。
いわゆる「たばこ肺」や「肺気腫(はいきしゅ)」などがこの病気に含まれます。タバコなどの有害ガスを吸入すると、肺に炎症や破壊が起こり、息切れや呼吸困難を来たすようになります。今後は死亡原因別死亡率の第3位になると予測されており(WHOと世界銀行による疾病負荷の研究)、対策が急がれている重要な病気の一つです。予防と治療が可能であり早期に発見(診断)し、治療を開始することが大切です。治療は、禁煙、吸入薬を中心とした薬物療法、呼吸リハビリテーション、重症の場合には在宅酸素療法を検討いたします。当院では通院呼吸リハビリテーションや呼吸ケアを積極的に行っており効果を上げております。
肺がんは、せきや血痰など自覚することもありますが、無症状のこともあり注意が必要です。当院は地域がん診療連携拠点病院の指定を受けており、学会のガイドラインに準ずる標準的治療、個々の患者さんのご病状に合わせた最新で最も効果が高い治療、QOL(Quality of Life, 生活の質)を重視した治療を提供しております。
診断は、喀痰検査、気管支鏡検査(肺のカメラ)、CTガイド下肺生検、局所麻酔下胸腔鏡検査などの検査と病理診断により行います。気管支鏡検査では、CT画像を利用した仮想気管支鏡、ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)などを利用し苦痛の軽減と診断精度の向上に取り組んでおります。一般に肺がんは、腫瘍細胞が血液やリンパの流れに入ることで全身に広がりやすい特徴があります。手術が向かない進行した肺がんの場合でも,化学療法(抗がん剤治療)を受けることにより、症状の緩和、QOL(生活の質)の維持、余命の延⾧を得ることが期待できます。
当科では,患者さん個々の体調,年齢や病状、がん細胞の遺伝子検査の結果などをもとに、その方にあった化学療法、分子標的治療を検討致します。放射線治療や手術が必要なご病状の場合にも、放射線治療科、呼吸器外科とスムーズな連携を行っており、最善の治療を提供しております。
手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療と並び、緩和ケアは大切な治療の柱です。がんによる症状をいかに和らげ、いかにご病気とともに生きぬくかを念頭に、当科では、肺がん診断時より積極的な緩和ケアを行っており、緩和医療チーム、緩和ケア内科とも連携を深めております。がん治療を受けるにあたり、医療費のことや生活のことなど不安は多いことと思います。
お困りなことがありましたら院内の「がん相談支援センター」へお越し下さい。看護師、医療ソーシャルワーカーが対応致します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全、間質性肺炎などを主な対象として通院呼吸リハビリテーションや呼吸ケアを積極的に行っており、当院で開発したサポートスクワットトレーニングを用いた運動療法は、多方面からの評価を得ております。
症状やご病状に合わせ、診断あるいは治療経過の評価を目的として様々な検査を行います。
主な検査を下記に示します。
※ PET検査は,当院と連携している医療機関へ御紹介致します。
胸部CT検査
局所麻酔下胸腔鏡検査
平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | |
---|---|---|---|---|---|
延べ入院患者(年間) | 16,690 | 17,779 | 17,246 | 14,456 | 17,743 |
外来患者数(月平均) | 1,325 | 1,346 | 1,239 | 981 | 995 |
主な入院病名 | |||||
肺癌 | 457 | 484 | 445 | 538 | 455 |
肺炎 | 307 | 250 | 226 | 435 | 488 |
間質性肺炎 | 88 | 121 | 81 | 54 | 113 |
気胸 | 62 | 67 | 47 | 33 | 41 |
慢性閉塞性肺疾患 | 58 | 46 | 59 | 48 | 51 |
①呼吸リハビリテーションのみに特化して行うことを目的に設置されました
②当院で考案された本邦初のトレーニングユニットによる運動療法
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、高度の呼吸困難を症状とする慢性で進行する病気です。病態が進行した場合、動いたときを中心に息切れが生じ、肺機能や全身の筋量、筋力の低下、生活能力(ADL)の低下が認められるようになります。重篤な方は、歩行困難、寝たきりの状態となり、ご家族や介護者への負担が高くなります。
呼吸リハビリテーションの中で中心となる運動療法は、呼吸困難の軽減、運動能、生活能力(ADL)の改善をもたらすことが示されています。その中でも下肢トレーニングは最も重要であると考えます。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺の機能低下が進行する全身の炎症性疾患であり,徐々に筋量、筋力の低下を認め、呼吸困難が増悪します。COPDなどの肺の病気で活動が低下した方では、足腰の筋群が衰弱しており、生活動作の中では“転ぶ、つまずく、出足の一歩が遅い” 等の症状として現れます。 この弱った足腰の筋力、筋量を改善することは慢性の肺の病気をもっている方や高齢者の運動療法として重要であると考えます。
当院呼吸器内科・リハビリテーション科では、包括的呼吸リハビリテーションとして、呼吸訓練法、栄養療法、独自のトレーニングユニッ トを使用した筋力トレーニングによる運動療法を行っています。慢性呼吸不全や高齢の方にとって、筋力低下による萎縮した筋群を強化するトレーニ ングとしては運動生理学的にスクワットが最も優れていることは周知のごとくですが、専用の機器が存在しなかったこともあり、これまでこれらの患者さん方には困難とされてきました。当院ではマッスル・サポート・テクノロジーを用いた本邦初のトレーニングユニットを考案し、自分で立ち上がることや歩行が困難な患者さんでも可能な運動療法を提供できるようにしました。すでに学会発表を通じ、多方面からの評価をいただいております。
これまでに当院の包括的呼吸リハビリテーションを受けていただいた患者さんの中には、息切れや呼吸状態が改善し、在宅酸素(HOT)を中止することができた方もみえますし、数年間ご自宅の階段をあがることが困難であった人が可能になったケースもあります。
当院は日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会等の教育認定施設として、専門医の育成にも努めています。
村松 秀樹
むらまつ ひでき
院長補佐 兼
第1診療部長 兼
呼吸器内科代表部長
中尾 心人
なかお まこと
第一呼吸器内科部長
武田 典久
たけだ のりひさ
第二呼吸器内科部長
栗山 満美子
くりやま まみこ
第一呼吸器内科医長
平田 雄也
ひらた ゆうや
第二呼吸器内科医長
杉原 雅大
すぎはら まさひろ
医員
林 俊太朗
はやし しゅんたろう
医員