身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、みなさまの生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献する、外科系の専門領域です。
守備範囲が広く、多岐にわたるため、各施設によって得意とする疾患が違います。
そのため、他施設の方が治療に適していると判断した場合は、それぞれの疾患に対応していただける施設を紹介しています。
海南病院での治療内容については下記をご参照ください。
美容医療もこの中に含まれますが、海南病院の形成外科では、自費診療になる美容医療は行っておりません。また、保険診療の範囲内で施術可能な先天性のあざやケガによる色素沈着に対するレーザー治療に関しては、信頼の置ける医療機関をご紹介します。
切り傷や擦り傷など、できたてのケガの治療は、なるべく早く適切な治療をしていく必要があります。救急外来で対応する研修医や救急担当医に、形成外科的な治療が出来るような知識と技術を教育することで多くの方に適切な治療が提供できるようにしています。
また、その後の形成外科通院をしていただくことで、より早く、より目立たない形で治っていくお手伝いをさせていただきます。
ケガや手術後のキズあとに、盛り上がる・ひきつれる・痛い・かゆい・・・などの症状がある場合、テープやシリコンジェルシートによる圧迫、内服、シール状のお薬の貼付、局所注射などの治療を複合的に行う事で症状の改善を図ることが出来ます。
ケロイドについても、このような複合的な治療を半年以上行った上で、手術が必要になってきた場合には放射線治療と合わせて行っていく場合もあります。
顔や露出する部分など目立つ部位にあるホクロや粉瘤などの「おでき」に対して、なるべくキズを目立たなくするようは工夫をしながら切除することが可能です。
また、皮膚がんなどの皮膚悪性腫瘍に関しては、皮膚科と連携をとりながら、大きく切除したあとの皮膚欠損を形成外科で修復する手術を行い、なるべく機能的な損失を少なくしつつ最終的にキズが目立たなくなるような工夫をしています。
太田母斑、扁平母斑、単純性血管腫、いちご状血管腫、静脈奇形など、レーザー治療や硬化療法が必要なものは、状態に応じてこれらの治療を得意とする愛知医科大学病院や近隣の施設を紹介しています。適切な施設選定のために、まずは一度ご相談ください。
胎内での耳介の発生段階で消えるべきパーツの一部が残ってしまった場合にできる副耳については、ご希望により、他の合併疾患がない場合には、全身麻酔での手術であれば1歳かつ体重10kgを超えた段階でご都合の良い時期に2泊3日の手術で切除・形成術を行います。また、局所麻酔での手術であれば患者本人が我慢できる年齢(概ね中学生以降)で日帰り手術を行います。
折れ耳、埋没耳、立ち耳などの耳介変形については、早い段階であればテーピングなどでの矯正を行います。成人のたち耳に関しては手術治療も可能です。
いずれの耳介変形についても変形が高度な場合は、装具作成や手術など集学的に治療可能な愛知医科大学を紹介しています。
乳がんの手術で切除されたり変形してしまった乳房を元の状態に近付ける手術を行っています。
自分の身体の一部を使って再建する方法やシリコンインプラントなどの人工物を用いて行う方法など、様々な方法があり、手術を行うタイミングも乳がんの手術と同時に行う方法と、乳がん治療がある程度終わってから行う方法があります。
これらの組み合わせは多種多様であり、乳がん自体の状態や患者さんのライフスタイルなどにより可能な方法が異なるため、第1・3月曜の午前中に専門資格を持った女性医師による専門外来を設けています。
当院では自家組織による再建手術には対応出来ないため、ご希望があれば愛知医科大学形成外科に紹介しています。
熱湯や油、調理器具など日常の中で触れる熱源によって起こった熱傷(やけど)に対して、適切な軟膏治療や手術(焼けた皮膚の除去や皮膚移植など)によってできる限り早く、なるべくひきつれの少ない方法で治します。
*入院による集中治療が必要な全身熱傷や重傷熱傷に関しては、現在対応していません。
足の爪が曲がり、爪の側面がくい込むことで痛み・出血を伴う陥入爪に対して、くい込んだ部分の爪だけが永久に生えないようにする根治的な手術(フェノール法)を行う事で治療しています。
日帰りの手術で術後の痛みも従来の部分抜爪術に比べて格段に少なく治療が可能です。
動脈硬化や糖尿病の合併症として脳の血管が詰まったり心筋梗塞が起こることはよく知られていますが、足の血管が詰まったり血流が悪くなると、足の皮膚に潰瘍ができます。多くは進行性で放置すると足の指や足全体が腐り切断をしなくてはいけなくなります。
循環器内科や糖尿病・内分泌内科と連携をとりながら、原因となった動脈の詰まりや血糖値のコントロールをしつつ潰瘍やキズの処置をする事で治療を行います。
また、切断をしなくてはいけない場合も、できる限り歩く機能を残す形での切断や、なるべく早く治る方法での切断、義足が付けやすくなる工夫などを様々な科と連携をとって行っていきます。
かかりつけ医やケアマネージャー、訪問看護師などと連携をとりつつ日々のケア方法の改善や軟膏の変更など、治療環境の整備を行っていきます。
外来では適宜デブリードマンを行い、在宅や入所施設での治療のお手伝いをさせていただきます。
*基本的には外来診療のみで、褥瘡治療を目的とした入院や手術については対応しておりません。
「眼瞼下垂」とは、正面を見たときに上まぶたが黒目にかぶさる状態のことをいいます。
視野が妨げられるので、物が見えにくい感じやまぶたが重たい感じがします。また、視野を広くしようと無意識にまぶたや額に力をいれることになり、目が疲れる感じ、額に皺がよる、肩こり、頭痛などがおこると言われています。
そのほかにも、眠そうに見られる、老けて見られるなどの外見的な問題も起こります。
「上眼瞼皮膚弛緩症」とは、加齢により上まぶたの皮膚が余ってしまい、目にかぶさってくるために眼瞼下垂症のような症状や外見になる場合をいいます。
これらの状態に対して、症状を軽くし、外見を改善する為の治療法が色々ありますので状態や原因によって最も適切な方法を考え治療を行います。手術直後から、まぶたが軽くなったと喜ばれる患者さんが多くいらっしゃいます。
手術の内容によって、日帰りで可能なものもありますが、術後に腫れることが多く、当日は創部を圧迫したり眼瞼の安静を図っていただく必要があるため、多くの場合は1泊入院での手術となります。
まぶたは皮膚が薄い部分ですので、手術後1~2週間は、青くなったり腫れたりします。形が完全に落ち着くまでは数ヵ月かかりますので、大切な行事の直前の手術は避けた方がよいでしょう。
発症からある程度時間がたち、回復傾向がなくなってすでに固定されてしまった顔面神経麻痺に伴う眼瞼周囲の症状(眉毛が下がる、瞼が緩んで視野にかかる、下眼瞼が緩んで涙目になる など)に対して、眼瞼下垂や皮膚弛緩症に似た手術によって症状を改善することが出来ます(顔面神経麻痺 静的再建術)。
状態によって出来る内容や術式が異なりますので、まずは一度ご相談ください。
動きを取り戻すような再建(動的再建術)については、適応がある場合は、愛知医科大学病院などの実績がある医療機関を紹介いたします。
皮脂成分を多く含むワキの汗をかくことで臭いを強く感じる腋臭症(わきが)に対して、皮脂の量や臭いの強さなどがある一定の基準を満たせば、汗腺の量を減らして汗をかきにくくする手術をする事が可能です。
ワキは皮膚が柔らかく、動かすと出血しやすい場所のため、術後の出血や血腫形成、皮膚壊死などの合併症が多く、術後しばらくの間、創部の圧迫と腕を動かさないようにするなどのワキの安静が必要になります。
そのため、両側同時の手術の場合は全身麻酔での手術を行ったあと、傷が落ち着くまで約1週間の入院が必要です。
片方ずつ時期をずらして行う場合には局所麻酔での手術も可能ですが、この場合も術後4日ほどの入院が必要で、反対側の手術までは3ヶ月以上間隔を開ける必要があります。
また、汗を多くかく時期の手術は避けた方が良いため、秋〜春の手術を推奨します。
形成外科 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 |
---|---|---|---|---|---|
外傷の手術 | 84 | 50 | 122 | 58 | 120 |
先天異常の手術 | 23 | 8 | 8 | 2 | 4 |
腫瘍の手術 | 219 | 196 | 188 | 190 | 139 |
瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイドの手術 | 17 | 12 | 11 | 2 | 6 |
難治性潰瘍の手術 | 57 | 65 | 37 | 36 | 8 |
炎症・変性疾患の手術 | 65 | 56 | 45 | 19 | 22 |
その他の手術 | 2 | 0 | 1 | 4 | 8 |
合 計 | 334 | 387 | 412 | 311 | 307 |
安村 恒央
やすむら つねお
形成外科代表部長
吉澤 英聖
よしざわ えいせい
医員
浅井 晶子
あさい あきこ
医員