当科は、日本腎臓学会と日本透析医学会の臨床研修施設に認定され、常勤医師6名で外来・入院・透析業務に従事しております。
蛋白尿・血尿、高血圧、腎機能低下を契機とする腎疾患の診断、急性腎不全・慢性腎臓病~腎不全の治療・管理、透析用バスキュラーアクセス作成手術から血液浄化療法まで、あらゆる腎疾患に対応します。(腎移植については情報を提供し、移植可能施設を御紹介させていただいています。)
近隣の診療所や病院とも連携を保って患者さんの紹介や連絡をスムーズに行っています。
健診での尿異常精査(とくに蛋白尿が持続するとき)、近医で腎炎やネフローゼが疑われたとき、当科外来でさらに尿・血液検査、画像検査(CTやエコー)を行い、腎炎・ネフローゼの診断を行っています。その結果、精密検査が必要と判断された場合には入院のうえ腎生検を実施します。腎生検とは、腎臓に細い針を刺して腎臓のごく一部の組織をとり、顕微鏡で詳しく調べる検査です。これにより、腎炎・ネフローゼの原因となる病気の種類や活動性(=病気の勢い)がわかり、治療方針が決定できます。腎生検の診断と治療方針については、名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科講座とタイアップしており、複数医師で協議の結果決定いたします。
腎炎の中で日本人に最も多いIgA腎症で、腎生検にて予後比較的不良と診断された場合は、扁桃腺摘出術とステロイド療法を短期入院治療用のプロトコールを決めて実施しています。
「慢性腎臓病」は、蛋白尿や腎機能障害(腎臓で血液中の老廃物を捨てる機能が60%以下)が3ヶ月以上持続する状態で、「慢性腎不全」は、さらに腎機能悪化が進行し15%以下になり、さまざまな腎臓のはたらきがうまくいかなくなる状態です。自覚症状に乏しく、腎不全末期となってから自覚症状がでたときは、もう透析が必要な状態ということもあります。また、脳卒中、心筋梗塞、心不全などの合併症もおこしやすいということが近年注目されています。自覚症状が少ない割に、食事療法や服薬が多く、患者さん・ご家族の方々の病気に対する理解と自己管理が治療成績を左右します。
当科では、血清クレアチニン2mg/dL程度から透析導入前までの慢性腎臓病~腎不全の患者さんに対し、医師・看護師・栄養士・ケースワーカーによる「医療チーム」で、患者さん・ご家族の方々に、腎不全および透析療法に関する情報提供を行っています。
また、血清クレアチニン3mg/dL(または5mg/dL)以上の慢性腎不全で一定の要件を満たせば、身体障害者(じん臓機能障害)4級(または3級)の申請が可能です。居住地等にもよりますが、これにより医療費が減免されるという特典があり、当院では、必要検査・申請書類作成が可能です。
機械で血液中の余分な水分や老廃物などを取り除く方法です。手術で腕に太い血管(『シャント』といいます)を作成する必要があります。シャントに針をさして血液をポンプで引き、機械で血液をきれいにして、再びからだにもどします。透析中はベッドの上で安静にします。週3回、1回4時間の透析が必要です。
当院では、血清クレアチニン6~8mg/dLとなったら短期入院のうえ、シャント設置術を行い、有症時に再度短期入院し、血液透析を開始します。安定したら、近隣の透析施設をご紹介します。
当院の『血液浄化センター』は、昭和63年に『透析センター』が開設され、透析を含めた各種血液浄化療法をおこなっていましたが、2013年8月26日より名称を『血液浄化センター』に変更し、新棟3階にリニューアルオープンしました。「コンパクトで高機能」という当院新棟建築の理念に準じ、可能な限りの対応がしてあります。重症の方に対応できる個室2床を含めた22床を有し、最大88名の治療が可能です。透析センターを有する当該地域での数少ない総合病院として、近隣の透析クリニックや総合病院から、合併症で入院加療が必要な透析患者さんも御紹介いただき対応させて頂いています。重症筋無力症・血栓性血小板減少性紫斑病・潰瘍性大腸炎など難病に対する血漿交換やリンパ球除去療法など、腎不全に対する血液透析だけでなく、血液浄化療法センターとして機能しています。
おなかにきれいな水(透析液)をいれ、血液中の余分な水分や老廃物などを取り除く方法です。手術でおなかに管を1本いれる必要があります。(常におなかから管の先が出ている状態になります。)管からおなかに透析液をいれ、数時間貯めておくと、おなかの中にある腹膜という膜から血液中の余分な水分や老廃物が透析液にしみだします。その後、その透析液を捨てて新しい透析液にいれかえます。透析液のいれかえ中以外は、仕事や買い物など日常生活が普通に行えます。「患者さんご自身」が自宅や職場で透析液を1日数回出し入れして行います。透析の状況を医師が確認するため、月に1~2回の通院は必要です。
当院では、血清クレアチニン6~8mg/dLとなったら短期入院のうえ、腹膜透析用カテーテル留置手術を行い、有症時に再度短期入院し、腹膜透析を開始します。
多発性嚢胞腎は、腎臓に嚢胞(のうほう)という水の入った袋がたくさんできて、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。70歳頃までに約半数の患者さんで透析や腎移植などの腎代替療法が必要となり、現在透析導入の原因疾患の第4位となっています。
嚢胞は、徐々に数が増えていき、それに伴い腎臓自体の大きさも大きくなっていきます。腎臓が大きくなると、胃腸を圧迫して食欲低下や膨満感を生じたり、背部の痛みが出ることがあります。また、嚢胞は腎臓以外の臓器にもできることが知られており、肝臓、膵臓などにもみられることがあります。
遺伝性の病気で、PKD1またはPKD2という遺伝子の異常で起こります。常染色体顕性(優性)遺伝という遺伝形式で、2分の1の確率で親から遺伝します。
多発性嚢胞腎には様々な合併症が知られています。
・高血圧症 ・脳動脈瘤 ・心臓弁膜症 ・大腸憩室 ・嚢胞出血 ・嚢胞感染 ・尿路結石 など
この病気はこれまで特異的な治療法はなく、高血圧や腎不全に対する対症療法しかありませんでしたが、2014年3月にサムスカ®(トルバプタン)という薬が認可されました。この薬は、元々、心不全や肝硬変に対して使用されていた薬ですが、腎臓の嚢胞の増大や腎機能の低下を抑える効果があることが分かり、多発性嚢胞腎に対しても処方可能となりました。(※1) この薬は腎臓の容積が左右合わせて750mL以上あり、また、腎臓の大きさが年間5%以上増大している方が適応となっておりますが、腎不全が進行した方には適応がありません。内服を始める際には入院が必要です。(※2) この薬は、値段が比較的高い薬ですが、高額医療制度や付加給付金制度などの補助制度もあります。ご希望の方には当院の医療相談室へ御相談の手続きをとらせていただきます。
※1 サムスカ®はどの医療機関でも処方できる訳ではなく、登録医のみ処方することができます。なお当院には6名の登録医がおります。
※2 当院では、2泊3日の入院としています。サムスカ®内服による飲水や排尿を心配される方も多いですが、仕事や生活のリズムに合わせた治療を提案いたします。
2014年10月より、愛知県で初の専門外来である『多発性のう胞腎外来』を開設しました。この病気は、初期には症状が乏しいこともあり、腎不全になって初めて腎臓内科を受診するケースも多くみられました。サムスカ®という治療薬が処方可能になり、早期に受診していただくことで、嚢胞増大や腎機能低下を抑制できる可能性があります。もちろん、サムスカ®の適応のない方や内服を希望されない方も、高血圧症や腎不全に対する治療を行っております。多発性嚢胞腎に対するパンフレットやDVDも無料にて配布しております。
またこの病気は遺伝する病気であるため、患者さん本人だけでなく、ご家族も含めたご相談にも対応します。
診療時間も1人30分程度の時間枠を設けています。当院の近隣からだけでなく、名古屋市内や愛知県内、三重県や岐阜県からも通院頂いています。
診療時間:第1、第3金曜日 午前9時~11時(祝日は休診)
※平日9時~11時の腎臓内科新患外来でも、サムスカ®登録医が対応します。
大塚製薬のADPKD情報サイト https://www.adpkd.jp/
区分 | 入院期間 |
---|---|
腎生検 | 4日間 |
内シャント設置術 | 3日間 |
血液透析導入 | 約1~2週間 |
腹膜透析用カテーテル留置術(SMAP) | 4日間 |
腹膜透析導入 | 5~12日間 |
腎臓内科 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 |
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腎臓内科新規入院患者数 | 365 | 442 | 415 | 424 | 463 |
血液透析導入者数 | 33 | 34 | 50 | 34 | 43 |
腹膜透析導入者数 | 12 | 10 | 10 | 2 | 11 |
腎生検 | 45 | 35 | 36 | 30 | 24 |
シャント手術 | 99 | 83 | 87 | 67 | 93 |
腹膜透析関連手術 | 16 | 20 | 21 | 16 | 27 |
通院血液透析者数 | 35 | 28 | 25 | 25 | 21 |
通院腹膜透析者数 | 30 | 38 | 34 | 27 | 34 |
通院腎移植患者数 | 6 | 7 | 10 | 14 | 15 |
鈴木 聡
すずき さとし
副院長 兼
臨床研修部長 兼
腎臓内科代表部長
柴田 真希
しばた まき
血液浄化センター長 兼
腎臓内科部長
谷口 容平
たにぐち ようへい
第一腎臓内科医長
坂 あや子
ばん あやこ
第二腎臓内科医長
中野 穣
なかの ゆたか
医員
冨田 早織
とみた さおり
医員